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2021年8月9日月曜日

老老介護の果てに「楽になりたい」妻殺害の82歳夫に実刑 責任感が強く真面目 2021年7月14日 18時00分

 

老老介護の果てに「楽になりたい」妻殺害の82歳夫に実刑 責任感が強く真面目

2021年7月14日 18時00分
79歳の妻を殺害したとして殺人罪に問われた82歳男性の自宅近くでは、車いすのお年寄りたちが行き交っていた=東京都品川区で

79歳の妻を殺害したとして殺人罪に問われた82歳男性の自宅近くでは、車いすのお年寄りたちが行き交っていた=東京都品川区で

<法廷のしずく

 車いすに乗った被告の男性(82)が、被告人席で背中を丸め、両手を固く握り締めていた。5月に東京地裁であった裁判員裁判。介護をしていた妻=当時(79)=を絞殺したとして殺人罪に問われた男性は、証言台に立った長男の言葉を目を赤くしながら聞いていた。
 検察官「なぜ事件は起きたと思いますか」
 長男「父は責任感が強くて真面目。介護を完璧にやろうと頑張りすぎ、疲れ果てたんだと思う」
 検察官「あなたの母親が殺されたわけだが」
 長男「家族の誰も、父が思い悩んでいたことに気がつかなかった。やったのは父だが、父1人の責任ではありません」

◆幸せそうに見えた一家

 男性は妻と42年前に結婚。信用金庫を定年退職後、東京都品川区で2世帯住宅を構え、2014年に長男一家を呼び寄せた。妻と長男夫婦、孫2人の6人で暮らす日々。近くの女性は「幸せそうに見えた」と振り返る。
 「以前は『夫と私の2人分ね』とおかずを買いに来ていた」(総菜店の女性)という妻は、16年ごろから体調を崩しがちになり、肺炎で入退院を繰り返すようになった。
 20年9月の入院時、担当医は家族に「余命半年」と告げる。1カ月の入院で足腰が衰え、歩くことが困難に。翌月の退院後、自宅で寝たきりになった。
 息子夫婦は共働きで夜も遅く、主に男性が妻を世話した。厚生労働省の19年の調査では、65歳以上の高齢者が自宅で高齢者を介護する「老老介護」の割合は過去最高の59・7%。男性の被告人質問から、その厳しい実態が浮かんだ。
 弁護人「排せつの世話はどうされていたんですか」
 被告「妻は酸素吸入器を着けていたので、転ばないよう支えながらトイレに連れて行っていました」
 弁護人「夜間は?」
 被告「1階は妻の介護ベッドを置くと布団を敷く場所がなかった。だから私の寝室は3階で、トイレの世話や様子の確認で10往復くらいしていました」
 弁護人「あなたも心臓に持病がありますよね」
 被告「動悸や息切れがひどく、自分の担当医に入院させてほしいと頼んだんですが、『通院で大丈夫』と言われてしまって」

◆自身の入院を断られ・・・

 老老介護が始まって1カ月余り。12月のある朝、男性は寝ている妻の首を絞めた。自身の入院を断られた2日後だった。
 妻の最後の言葉は「苦しい、離して」。男性は「楽になりたいと思ってしまった。妻には謝っても謝りきれない。本当に申し訳ないことをしてしまった」とつぶやいた。
 今年6月、裁判長は判決で「周囲に助けを求めることもできたのに、短絡的に犯行に及んだ」と懲役4年の実刑を言い渡した。
 判決後に男性宅周辺を訪ねると、男性と面識があるという70代女性に出会った。女性の夫も病気で寝たきりという。「夫を殺して自分も死のうと何度考えたことか。介護のつらさは当人にしか分からないのよ」(山田雄之)
    ◇
 「法廷の雫」では、法廷で交錯する悲しみや怒り、悔恨など人々のさまざまな思いを随時伝えます。

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